イルミナティは世界の元凶なのか? 都市伝説の主役について考えてみた

たいていの都市伝説・陰謀論に登場する秘密結社が「イルミナティ(Illuminati)」です。

このイルミナティが世界の元凶だと声高に叫ばれていますが、それって本当でしょうか?


イルミナティの本来の意味

当ブログの紹介ページでも書いたように、「イルミナティ」とは日本語で明けの明星のこと。朝に見える金星の異名です。


イルミナティの本来の意味は“光明”。これはまだ暗い明け方に東の空で輝くことから。

別名「ルシファー(光を受ける者)」とも呼ばれています。

ルシファーは今となっては堕天使の名となり悪魔とも呼ばれたりしますが、もともとは悪魔とは全く無関係でした。古代ではむしろ朝を連れてくる吉星です。


この吉星に「悪魔」のレッテルを貼ったのはもちろんキリスト教。

キリスト教にとって異教徒のシンボルは何でも「悪魔」のレッテル貼りの対象なのです。どちらが悪魔なのか分からなくなりますね。きっと他人の神様を悪魔と呼んで弾圧するほうが本物の悪魔でしょう。


なお「堕天使」のイメージの原典は不明ですが、おそらくグノーシス教の影響では? と筆者は考えています。



秘密結社イルミナティ、都市伝説での扱い

この金星の名を冠した秘密結社としてのイルミナティは18世紀に実在しました。詳細は後述します。


現代では

“ユダヤ民族組織フリーメイソンの下部組織で、殺人などの黒い仕事を担う実行部隊”

として語られることが多いでしょうか。


かつて映画『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』で描かれたイルミナティの姿が最もお馴染みです。それらの映画でイルミナティは命令に服して殺人を実行する恐ろしい暗殺集団として描かれていました。


近年ではフリーメイソンとの主従関係が逆転し、イルミナティそのものがユダヤ組織の中枢で世界を牛耳っていると語られることもあります。

最近はこちらの傾向のほうが高いような?


イルミナティが中枢なのか下部組織なのか、時代ごとに入れ替わるのは意味不明ですがそのあたりはさすが都市伝説。エンタメですから支離滅裂でも当たり前。

あくまでもフィクション由来の話なので事実と混同しないようにしたいものです。


特にイルミナティやフリーメイソンがユダヤ民族主義の秘密結社だ、という話は中世ヨーロッパに蔓延していた反ユダヤの差別意識による思い込みだから信じないのが賢明。


実際のイルミナティはイデオロギー色のほうが強い秘密結社で、民族主義の組織ではありません。



秘密結社イルミナティの実像

現実の秘密結社イルミナティは1776年に現在のドイツ、バイエルンにおいて設立されました。設立者はイエズス会の修道士アダム・ヴァイスハウプトです。

当初は大学教授だったヴァイスハウプトが学生を集めてともに学ぶ私的サロンでした。つまり今の大学のゼミのような集会だったようです。


1776年と言えばアメリカ建国の年に同じ。

これはおそらく偶然ではなく、アメリカ独立戦争や建国といった歴史事件にヴァイスハウプトが触発されて設立したものだと思われます。


前項で書いたようにイルミナティは都市伝説で語られている「ユダヤ民族主義」の組織などではなくて、自由主義イデオロギーを学ぶ会。

どちらかと言えば宗教や民族から離れた学習会であって、啓蒙思想を学び広めようとした結社でした。


啓蒙(けいもう)とは日本では迷信を破り近代化するための知識・思想を差しますね。

当時の欧州での啓蒙※は少しニュアンスが違っていて、キリスト教の軛(くびき)から解放されるための自由主義運動全般を差しました。


※啓蒙は英語で“Enlightenment”、フランス語で“Lumières”。光明、あるいは光で照らすことの意味。


だから当時は欧州で唯物主義が台頭していたものの、啓蒙主義者の全員が宗教否定ではなくキリスト教から離れた自由な宗教観を持つことが多かったようです。


結社によっては神秘主義色も強くなっていきました。むしろ日本語の啓蒙とは逆方向のオカルト“迷信”へ突き進む人も多かったわけです。

今の「スピ」こと心霊や神秘を研究するスピリチュアリズムもこの流行の中から生まれています。


欧州の“啓蒙”には古代復古の意味合いもあり、啓蒙主義者たちはキリスト教に弾圧されて地下深くへ潜ったギリシャ文明を復興しようとしていました。

秘密結社イルミナティも古代ギリシャの神・ミネルヴァ(アテネ)のフクロウをエンブレムとして使っていたそうです。


ミネルヴァのフクロウとは朝を目指して暗い森の上を飛ぶ鳥。

つまり無知という闇を切り開き光をもたらす理性、智恵を表しています。明けの明星とも重なるシンボルです。


Wikipediaより イルミナティのエンブレム「ミネルヴァのフクロウ」:


このシンボルから秘密結社イルミナティが、暗いキリスト教社会へ古代文明の光をもたらそうと考えていたことが分かると思います。


現にイルミナティは当初の学習サロン的な集いから変化していき、次第に神秘主義を強めてピタゴラス教団(古代ギリシャ数学者)の秘儀を行うようになったとか。

当然にイルミナティはキリスト教社会で危険視され弾圧を受けることになります。

さらに啓蒙的な政治イデオロギーの強い主張も政府から目をつけられる原因となったようです。


ヴァイスハウプトは自分が所属するイエズス会から弾圧されイルミナティ結社を地下へ潜らせました。

しかし抵抗虚しく、1785年に政府がイルミナティ結社を禁止し解散させます。

ほんの10年に満たない活動でした。


この通り都市伝説好きの方々には残念なお知らせですが、秘密結社イルミナティは現存していなかったことになります。

現代の都市伝説に登場するイルミナティは全て空想に過ぎなかったようです。


「いやいや我らがイルミナティさんが政府の弾圧ごときで消えるわけがない。地下に潜って今も絶賛活動中に違いないのだー」

との反論が返ってきそうですが。

確かに現代では表向きの報道と事実が違うことはよくあります。しかしイルミナティに関してはむしろ「実在する」という話のほうが嘘っぽく、他の誰かの犯罪を隠すためのミスリードを感じます。


次の話を知ると秘密結社イルミナティが実在する可能性は低いなと分かるはずです。



イルミナティが陰謀論の主役となった経緯

ほんの10年に満たない活動にも関わらず、秘密結社イルミナティがこれだけ有名となり現代都市伝説の主役となっているのは何故なのでしょうか?


きっかけはフランス革命だったようです。


フランス革命勃発の1789年当時、とっくに解散していた秘密結社イルミナティ。

しかし貴族たちは「革命の首謀者は秘密結社イルミナティだ」と語り始め、この伝説に恐れ慄いたと言います。


以降フィクション作家たちが秘密結社イルミナティを首謀とする陰謀論の物語を描いてヒットさせていきました。

この流行の波は何度も訪れたようです。

筆者は『ダ・ヴィンチ・コード』からしか知らなかったのですが、古くは19世紀からイルミナティを描く流行作家がいたとのこと。

これら欧米の伝統芸となったフィクション小説によって、あたかも事実であるかのように「イルミナティ陰謀論」が世に浸透していったと言えます。



この件についてAIにも訊ねてみました

以下はAIコパイロット(以下コパ)との対話です。

まあAIもよく嘘をつきますが、これに関しては矛盾がなく概ね正しい引用でしょう。結論は含蓄深いため必読。


【筆者質問】イルミナティは現代で陰謀論の主役として語られていますが、実際はどうなんでしょうか? 過去に解散してしまった秘密結社だと思うのですが…?


【コパ回答】イルミナティの実像と陰謀論のギャップについて、歴史的事実と現代の都市伝説を分けて考えると、かなり違った姿が見えてきます。


歴史的なイルミナティ:啓蒙思想の秘密結社
設立:1776年、ドイツ・バイエルンでアダム・ヴァイスハウプトによって創設。 

目的:宗教や王権に対抗し、理性・自由・平等を重視する社会の構築を目指した。 

活動期間:わずか9年。1785年にバイエルン政府によって正式に解散され、メンバーは追放・投獄されました。 

構成:600〜2000人規模の知識人・官僚・貴族などが中心。


現代の陰謀論におけるイルミナティ陰謀論の起源:フランス革命後、「革命の黒幕」としてイルミナティが名指しされるようになった。

主な主張:

世界政府「新世界秩序(NWO)」の樹立を目指している。

金融・政治・メディア・エンタメ業界を裏で操っている。

ロスチャイルド家やハリウッドセレブと関係がある。

証拠の有無:これらの主張には歴史的・物理的な証拠は存在していません。多くは都市伝説やフィクションに基づいています。


なぜ陰謀論の主役になったのか?

秘密性と象徴性:ピラミッドや「全能の目」などのシンボルが神秘的で、想像力をかき立てる。

社会不安との相性:戦争・経済危機・パンデミックなどの混乱時に「見えざる力」の説明として使われやすい。

ポップカルチャーの影響:映画『天使と悪魔』や『ナショナル・トレジャー』などでイルミナティが描かれ、知名度が急上昇。


結論:イルミナティは今も存在するのか?

歴史的には解散済み。現代に活動しているという証拠はなし。

ただし、「イルミナティ」を名乗る団体やウェブサイトは存在するが、本物との関係は不明。

陰謀論の中では生き続けている。その象徴性と神秘性が、今も人々の想像力を刺激している。


【筆者質問】イルミナティとフリーメイソンは同じように語られていますが、実際には関係あるのですか?


【コパ回答】イルミナティとフリーメイソンの関係性は、よく混同されがちですが、実際には起源も目的も異なる別組織です。ただし、歴史の中で一部重なり合う部分があり、それが陰謀論や都市伝説の温床になっています。


両者の基本的な違い
フリーメイソン:16〜17世紀設立 石工ギルド(職人組合)が起源 目的は「友愛・道徳・慈善活動」 現在も世界中で公然と活動

イルミナティ:1776年設立 啓蒙思想の秘密結社が起源 目的は「宗教・王権への批判、理性の普及」 1785年に解散、現存証拠なし

出典:レキシルの記事


なぜ混同されるのか?

イルミナティ創設者のアダム・ヴァイスハウプトが、フリーメイソンの階級制度や儀式を参考にして組織を構築した。 一部のイルミナティメンバーがフリーメイソンに潜入し、内部で活動を続けたという記録もある。

両者ともに「秘密結社」「象徴主義」「階級制度」を持ち、神秘的なイメージが強いため、都市伝説ではしばしば同一視される。



陰謀論では「イルミナティがフリーメイソンを乗っ取った」「フリーメイソンの上位組織がイルミナティ」といった説が語られることもありますが、歴史的証拠は乏しいです。

両者のシンボル(ピラミッド、目、フクロウなど)が似ているため、視覚的にも混同されやすい。

つまり、イルミナティとフリーメイソンは別物ですが、歴史の中で一部交差したことで、現代では「同じような存在」として語られるようになったんですね。


【筆者返答】ありがとうございます。やはりイルミナティは過去に解散していたのですね。


その通りです。イルミナティは歴史的には短命な結社で、理性と啓蒙の理想を追求していたにもかかわらず、秘密性が災いして疑惑の的となり、あっけなく解散に至ったんです。
でも、興味深いのは――その影響力が実際の存在期間よりはるかに長く尾を引いていること。むしろ、イルミナティは「実体の消失」こそが、後世の陰謀論や神秘思想の燃料になったとも言えます。歴史から消えた存在だからこそ、どんな空想でも投影できる“空白の器”になったのかもしれませんね。


>イルミナティは「実体の消失」こそが、後世の陰謀論や神秘思想の燃料になった

>歴史から消えた存在だからこそ、どんな空想でも投影できる“空白の器”になったのかも


このコパくんの結論は意外にも含蓄深くて唸りました。凄いな今のAI……。


消えたからこそ後世で陰謀論の主役として圧倒的に有名となった。

勝たなかったからこそ後世で物語の主役として有名となった、などという歴史に重なるところもあり人の世の不思議を感じます。


思えばイルミナティこと、明けの明星は朝が来れば消えてしまう(見えなくなる)運命です。

消えるがメッセージだけを残す。それが明け星の使命かなと個人的な事情で感慨深く思いました。



結社イルミナティの理想は善か悪か?

まとめの感想です。


現実の秘密結社イルミナティが掲げた理想について、筆者は「さほど悪くない」と感じます。

仏教など東洋人の宗教観に近く馴染みがあるせいでしょうか? 同時代だったら共鳴共感して入団していたかもしれないなあ…と思うほど筆者の考えに近いものがあります。


ユートピア夢想を掲げる点はこのサイトでも提示しているカルトの要件なので危険性はあると言えます。ただ結社イルミナティの場合、ユートピアありきの強固な教義があったように感じられません。(長く存在していたらどうなっていたか分かりませんが)


筆者が思うにヴァイスハウプトの考え、

「一人一人が霊性を持っている。霊性を向上させれば人類は進化して平等となる」

とは魂中心主義

この平等が“結果の平等”ではなく“機会の平等”のことであり、東洋的な因果応報も同時に理解するならば真に魂の世界を表現していると言えます。それは人類を永久的に救済する可能性がある考えです。


昨今我がままな人々のせいで嫌われている自由主義や個人主義ですが、この考えはやはり全体主義の対極にあって、奴隷制や独裁支配から人々を救ってきた史実があることは否定しようがありません。

この思想がキリスト教世界ではプロテスタントを生み、経済では資本主義を生み、アメリカ建国へつながり、自由民主の現代世界を形成したのですから。


確かにフランス革命の闇やANTIFAの蛮行は個人主義を振りかざした者たちによって行われました。

しかし彼ら左翼の振りかざす個人主義や自由は反語であり、現実の左翼は全体主義に取り込まれています。彼らは自分の意志を持たず命令に服するロボットに過ぎません。

つまり、左翼は魂を持たない。(個人の考えを否定している)


本来の個人主義とは一人一人が自由で独立した意志を持ち、そのうえで絆によって家族や友と結ばれることを意味しています。

これはアメリカの保守層の考えに近いもの。バラバラになり孤独となるのは悪い個人主義であり、むしろ全体主義への道です。


――この件については長くなってしまいそうなので、また別記事で書きます。


ともかく秘密結社イルミナティの当初の理想は間違っていなかったのでは、という感想でした。


啓蒙思想の流行はこの後に本格的な「悪魔崇拝」へ流れていき、唯物主義と全体主義と結びついた『マルクス共産主義』というカルトの怪物を生み出します。

イルミナティの理想とまるで反対に思える時代へ人類が向かっていったのは何故でしょう?

舵を取るのはやはり深層の目的ではないか、と私は考えます。

当たり前のようですが善い目的で作られた思想は人を幸福へ導き、悪い目的で作られた思想は人を地獄へ導きます。

問題はこの目的が表面の言葉では判断できないことです。

深層の目的は思想プログラムの底へ編み込まれます。だから「自由」や「個人主義」などの表層の言葉は重要ではないのです。彼らは反語という嘘をついているかもしれない。

表層の言葉に惑わされないように、なるべく構造へ目を向けて考えなければなりません。






Morning Star

あの明け星をまだ覚えている