1.人はユートピアを目指す時、地獄へ歩み始める
カルトの必須要素は「信者限定ユートピア」の物語
世界中のカルト※宗教・思想が必須とする構成要素に、ユートピアの物語があります。
たとえば
「現在の世界が滅亡した果てに、平等で苦しみのない新世界が実現する」とか。
「救世主に救われて天国へ行ける」「極楽浄土(ごくらくじょうど)へ達する」「桃源郷(とうげんきょう)へ行ける」……などなど。
表現は文化圏によって様々に変わりますが、どれもユートピアへ誘う思想です。
ただしこれらのユートピアは全て条件付き。
どれも「我々の宗教を信じれば」「我々の理念を実行すれば」という前置きが添えられています。
人はユートピアへ憧れずにいられない生き物。
しかも教祖は言葉を尽くしてそのユートピアがどれほど素晴らしい世界かを語ります。時には絵画や創作を使って魅惑的に表現します。
人の欲望は計り知れないものです。
今の人生が苦しくて逃れたいと思っている人はもちろん、今そこそこ幸せな人でさえ最高の幸福を求めてユートピアへ誘われてしまいがちです。
しかし歴史上、ユートピアへ向かったカルト思想の信者が幸福になったことはありません。
信者たちは皆ハーメルンの笛吹に連れられたネズミたちのように自滅の道を突き進みました。
いや“自滅”だけならばまだマシです。
たいていのカルト教祖は「世界中の人間が一人残らず我が宗教(思想)を信じなければユートピアは実現しない」と教えます。
この教えによって「ユートピアが実現しないのは教義を信じない反抗者のせいだ!」と信じ、怒り狂った彼ら(彼女ら)は信者以外を殺してしまいます。しかも何故か最大限に苦しめる残酷なやり方で。
こうしてユートピアに憧れるネズミたちは粛清を楽しむ狂気の獣と化し、ユートピアどころか血の臭いが絶えない地獄に棲むことになります。
ユートピアへの旅は地獄への直行便
人類の歴史では何度もこのような地獄が繰り返されてきました。
【ユートピアを掲げる宗教思想による殺戮の例】
・(欧米)キリスト教による異教徒殺戮
・(中華)太平天国の乱、大虐殺
・(中華)白蓮教の乱・(日本)浄土宗の一向一揆
・(全世界)共産主義による反論者粛清
・(共産国)共産党政府による“人民”大虐殺
・(日本)オウム真理教によるテロ事件
・(日本)極左赤軍によるテロ、リンチ殺人事件
以上は有名なごく一部の例です。
これら多数の歴史事例からこう言うことができます。
――人はユートピアを目指した時から獣と化し、地獄へ歩み始める。
思うに「今ここ」の幸せを知らず、既に持っている幸福を破壊してまで欲望を貪ろうとする心が自らを地獄へ導くのでしょう。
カルト思想の強い信奉者となりやすいのは、たいてい恵まれた家庭に育った若者であることも真理を示唆しています。
※「カルト」という用語について:本来は宗教儀式や儀礼を表す用語ですが、当サイトでは俗語として一般的な意味で用います。詳細は用語定義をお読みください。
続き>>2.「終末論+ユートピア夢想」で多くの人が絡めとられる
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