3.(終末論+ユートピア夢想)×唯一教=独善凶悪カルト

カルト思想の基本的な構成要素として「ユートピア物語」と「終末論」を見てきました。

最後に仕上げとなる「唯一教」の要素を挙げておきます。


「唯一教」は全体主義の支配を叶える悪魔の力

「唯一教」とは、キリスト教などの一神教や、マルクス主義などの独裁思想が持つ要素です。

それらの神や教義に誤謬※はないと信じられていますので、信者たちは一切の誤りを認めず反省しません。もちろん批判や反論も許しません。


※誤謬:ごびゅう。論理的な誤り、ミスのこと


また他の神や教義が並び立つことを許しませんので、対抗勢力を全力で潰そうとします。このため対抗勢力に対する大量虐殺を実行します。


さらに独善的で傲慢なこの信者たちは、自分たちの神・教義を信じない者の存在すら許しません。

人それぞれ好きな神を勝手に信じればいいではないか…と考えるのが人としての普通の感覚ですが、唯一教を信じる者たちはそれすら許さないのです。まるでストーカーのように非信者を追いかけて自分の神や教義を好きになることを強要します。信仰に抵抗する人には拷問をかけて言うことを聞かせようとします。

それでも従わない人は殺してしまいます。ここでも大量虐殺が行われます。


このように終末論+ユートピア夢想で一定数の信者を獲得した教団が「唯一教」の神や教義を持つと全体主義支配を実現します。

欲望を持たず恐怖に屈しなかった人々もここで殺され一掃されてしまいますので、この教団が支配している地域では「信者」以外が存在しない世界となります。


言い方は悪いですが、無敵の凶悪カルト集団となるための仕上げ要素こそが「唯一教」なのです。


まるで悪魔が与えたような力だと思うのは私だけでしょうか。

もちろん“悪魔”などという生き物は存在しませんので、かつて人間だった者が欲望極まると悪魔化してしまうという喩えです。



何故、人類は唯一教カルトを誕生させたのか?

前項でも書いた通り唯一教はこの世のありとあらゆる欲望、悪行を結集させて作った権力の根源と言える要素です。

傍若無人の独裁を与えるこの力のもとではどのような犯罪でも実行可能となります。


若い女の子を連れ去って好き放題に弄ぶこともできますし、幼い子どもたちを食卓に乗せることさえ可能です。

信者たちに命じて“人民”こと奴隷たちにお互いを殺し合い、食い合うことを強制することもできます。

(えぐい話ですが一神教の教会や共産主義国で実際に行われてきた史実。今も一部の国で行われていることが分かっています)


したがって唯一教カルトの支配下では、断末魔の悲鳴、血の臭いと腐臭、奴隷となり繋がれた人々の苦痛に満ちたうめき声が絶えません。

地獄そのものの様相を呈します。

ここで最初の記事に書いた話に戻りますが、「ユートピア」に憧れて入信した人々が求めた結末は地獄だったというわけですね。


それにしても人類はいったい何故、破滅に向かうしかないと分かっているのに唯一教という悪魔的な力を誕生させてしまったのでしょうか?

理由はやはり「統治のため」だったようです。


初めての一神教

かつてエジプトでは征服された地域の人々がそれぞれの神を持ち合って暮らしていました。

いわゆる“多神教”の国だったのですが、各宗派の神官たちに権力が分散し、ファラオ(王)の力が弱まり国のまとまりがつかなくなってきました。

この問題を解決するために法律で一つの神を崇めるよう定めたのが、第18王朝の王アメンヘテプ四世、またの名をアクエン・アテンです。


彼は「アテン神」という王家の先祖にまつわる太陽神だけを崇めるよう国民に強制しました。

これが一神教の始まりとされます。


一神教とは言えこの当時はまだ穏やかなほうだったと言われていますが、アテン神はもう立派に排他性を持ち、“異教徒”の弾圧まで行われたそうです。

しかしそのことで国民の壮絶な反発を受け一神教崇拝は彼の治世一代で終了しています。

子のツタンカーメンの時代に元の多神教へ戻され、アテンの神殿も解体されてしまいました。


統治ツールとしての一神教利用

ところが後の時代に一神教の統治力へ目をつけた指導者たちが現れたようです。

まずユダヤ教がその始まりでしょう。民族宗教として結束を高めるために一神の排他性が強まったのではないかと思われます。


そして排他性を極め、統治ツールとしての権力機能を高めたのがキリスト教でした。

広大な地域を侵略した結果、多民族を統治しなければならなくなったローマ帝国は西暦392年、それまで弾圧し続けてきたキリスト教を国教と定めて権力の源としました。

ここからキリスト教会による異端弾圧の歴史が始まります。


一神教を明白に統治のツールとしてとらえ、意識的に権力の機能を高めるプログラムを組み込んだのはどうやら賢いローマの支配者たちだったようです。


唯一教という禍根

当初は国家統治のため、争いを鎮める目的のためだったのかもしれませんが、人類は「唯一教」という凶悪なプログラムを誕生させてしまいました。


結果、未来の人々を地獄に陥れる禍根を残します。


後に一神教のプログラムを構造のみ抽出して受け継ぎ、全体主義ツールとして特化させたのがマルクス共産主義です。



基本続き>>4.「私有財産の没収」が完全な支配を実現する